優秀すぎて人生イージーモードな王太子セシル。退屈な日々を過ごしていた彼はある日、公爵令嬢バーティアと婚約したところ、突然、おかしなことを言われてしまう。「セシル殿下!私は悪役令嬢ですの‼︎」バーティア曰く、彼女には前世の記憶があり、ここは『乙女ゲーム』の世界で、彼女は『悪役令嬢』なのだという。そんな彼女の目的は、立派な悪役令嬢になって婚約破棄されること。そのために突っ走るバーティアは、セシルの日々に次々と騒動を巻き起こしはじめてーー?
本作はタイトル通り、悪役令嬢の婚約者が主観となるストーリーとなっています。本来なら転生前の知識を有効活用して逆転無双がセオリーですが、主人公セシル殿下の婚約者である公爵令嬢のバーティアはセシルが幸せになるためだけに奮闘します。その第一歩が何故か立派な悪役令嬢になること。そして婚約破棄をしてもらい本来のゲームのヒロインであるヒローニアとセシルをくっつけようと必死です。
シナリオ通りであればセシルはバーティアには興味も示さずただの婚約者として最低限の付き合いだけ済ませ、ヒローニアに今まで感じたことのない興味を抱き恋心に発展。嫉妬に駆られたバーティアの嫌がらせや家族の問題を原因に婚約破棄を突き付けるはずが、天然なのかお馬鹿なのかバーティアは出会い頭、初対面のセシルに対して”私は悪役令嬢ですの!私の役目は殿下とヒロインの仲を引き裂いて最後は婚約破棄をされてギャフンと言わされることなんですわ!”と発言。奇天烈な発言や行動を繰り返すバーティアにセシルは”面白いね、大きな害は無いようだししばらくは観察してみるよ”と興味津々な様子。
とある事情から物事をなんでも簡単にこなせてしまうセシルは何をしても興味が続かず人生に飽き飽きしてしまう達観した子供でしたが、この訳のわからない婚約者の存在はとにかく面白く、そして彼女の語る未来が起こり得そうなところにも興味が惹かれて今後起こりうる事件に対しても事前に対策を練ろうと動き出します。
シナリオ通りに立派な悪役令嬢になろうと奮闘するバーティアをいとも簡単に阻止しつつ、次第に自分の知らなかった感情に気付き戸惑うセシル。
ゲーム本編の始まる時期に差し掛かるも、こんなに面白い婚約者がいるのに他の令嬢などに目移りする訳もなく…。
今後起こり得るであろうゲームのシナリオをペラペラと話してしまう割には、なぜ悪役令嬢を目指さすのか、なぜ婚約破棄をされたいのかを濁すバーティアの謎と、そんな彼女を観察しつつも自分の感情や周囲の人々の感情を考えるようになり変わっていくセシル、2人の恋の行方など読み応えバッチリな作品です。