『阿武ノーマル』は、川上大和が原作を、タイジュンが作画を担当する新感覚のサイコ・サスペンス漫画です。物語の主人公は阿武英子、29歳の独身女性です。彼女は、物事の価値基準を「普通」かそうでないかで測り、その「普通」に固執するあまり、周囲の人間関係が綻び始めるという物語です。
この作品は、「普通」とは何か、「異常」とは何か、という人間の倫理を問う内容で、読者に新たな視点を提供します。主人公の阿武さんは「無関心」が災いして職を失った過去があり、それが「普通」を目指すきっかけになります。しかし、彼女の「普通」への執着は、他人との関わり合いにおいて演技感を顕著にし、読者には彼女の行動がエンターテイメントとして楽しめる要素となっています。
本作は、現代社会における「普通」という概念について深く掘り下げており、読者自身の価値観に疑問を投げかけることもあります。また、漫画に慣れた読者であっても、先が読めないドキドキする展開が楽しめるでしょう。
『阿武ノーマル』は、少年マガジンの公式無料漫画アプリ「マガポケ」で読むことができます。サスペンスやサイコパスジャンルの漫画が好きな方には特におすすめの作品です。
原作を担当する川上大和氏は、漫画家としてのキャリアをスタートさせるきっかけがとてもユニークです。SNSで「100日後に漫画家になる」という動画を投稿し、その反響により漫画家を目指すことになりました。その後、2022年12月に読み切り作品を持ち込み、わずか1ヶ月後には『阿武ノーマル』の連載が決定しました。
『阿武ノーマル』のキャラクター創造の背景には、川上氏の個性的な友人が影響しています。彼の友人が、同じく変わり者の恋人と同棲を始めたことから、このような設定の人物が同棲すると面白い展開になるというアイデアが生まれました。また、川上氏は作品の連載を実感する瞬間として、マガポケのコメント欄で読者の反応を見ることを挙げています。彼は作品に対する一言一言を重く受け止め、読者の声を作品に活かすことを心がけていると述べています。
川上氏は、作品のキャラクターの中でも河原に特別な愛着を持っているようです。当初は悪役として登場した河原ですが、物語が進むにつれて「嫌いじゃないキャラ」の位置にいてほしいと意識しており、読者からも愛される存在になっていると述べています。
阿武ノーマル
〜の魅力
ストーリーの魅力
普通への執着が生む、予測不能な展開
主人公・阿武英子の「普通」への強い執着によって、「あ、そうなっちゃうんだ」と、予測不可能な展開が繰り広げられます。この物語では、「普通」と「異常」の境界線を探りながら、アスペルガーと超えたサイコパスなサスペンスを巧みに描いています。狂気が日常を演じようとする努力は、新たな視点を提供しています。
キャラクターの魅力
Theサイコパス
阿武英子は、一見普通に見えるが、その内面は複雑で予測不可能な女性です。彼女は「普通」を極端に追求することで、読者に強烈な印象を与えます。彼女の周りには、同様にクセのある魅力的なキャラクターが登場し、物語がどんどん展開していきます。阿武の行動力の斜め上の発想は必見です。
絵の魅力
緊迫感あふれる演出で読者を引き込む
緊張感あるシーンの描写と個性的なビジュアルで読者を魅了します。画力が高いというわけではありませんが、サスペンス的な内容にマッチし、テンポの良い構成力があるため臨場感のある読み応えがあります。特に阿武英子の表現力が高く欠乏している感情を努力で補おうとする様をハッキリと感じられます。
主人公・阿武英子の「普通」への執着が、読者の予想を超える展開を生み出しています。サイコサスペンスに分類されると思いますが、ストーリーとしては猟奇的な異常者として描くのではなく、普通がわからないという点に焦点が当てられています。
主人公はいわゆるサイコパスと呼ばれる人種で、感情が欠落している障害と言っても良いかもしれません。ホラーではありませんが、サイコパスが普通の人として擬態しようとしているとも見て取れるため違った怖さを感じます。主人公の普通に対する執着は異常であり、かつ行動力があるため普通になるために結婚すら即決してしまいます。
この理解できないからこその怖いという体験はあまり味わう機会がないかもしれません。サイコパスのエピソードで自分の目的や正当性の為なら殺人すら良心の呵責がないといった猟奇的なストーリーは見かけますが、『阿武ノーマル』ではどちらかと言うと身近な嫌なやつを空気読めない阿武英子が解決する…といったテイストになっています。
しかし、猟奇的ではないからこそ主人公を理解できなくて恐ろしいという体験はできるかもしれません。普通ではない女性が普通を努力する違和感を楽しめそうであれば一度読んでみましょう!
こんな人にオススメ
サイコパス
個性的なキャラ
ヤバい主人公
社会人
復讐
映画的なサイコパスではなく、リアルなサイコパスを求めている、または通常出会わないようなキャラクター性を求めている人にはオススメできます。
また、攻撃的な描写が好きではなくヒューマンドラマが好きな人にも向いているでしょう。
オススメしない
あくまでも女性社会人の日常であるためアクション要素を求める人には向かないかもしれません。映画的ないわゆるサイコ要素はありません。想像しやすいのは強烈なアスペルガー症候群(今はASDに自閉症と統合されている)です。
また、どちらかと言えばコメディー寄りのシーンも多くあるため緊張感を求める人には肩透かしを受けるかもしれません。
口コミ
読んでて笑ってしまった。陰鬱なストーリーよりコメディーに持っていったほうが好きだな
阿武英子は29歳の独身olです。カタヤ企画の生産技術部で、大学時代からの友人とともに働いています。普通に生活するためそこそこ努力しています。
そこに問題を抱える派遣社員、河原が入ってきてさぁ大変!というのが大筋です。同じくつるんでいた榊原は泣かされ、ある人は命を狙われと大騒動に発展します。サイコパス系ヒロインのお仕事もの、とっても楽しく読めました!
第1話はとても魅力的で、私の心を引きつけました。平本アキラ先生のような洗練された絵柄で描かれた女の子は本当に可愛らしく、主人公の「かなりヤバいけれど実は有能」というキャラ設定には惹かれました。しかし、その後の展開は少し物足りなく感じました。主人公の恋愛に対する試みは理解できますが、キャラクターが薄っぺらくなってしまったように感じられたのです。私はもっと主人公の独特な魅力を求めていたので、続きにはあまり興味が湧きませんでした。
阿武という女の子が普通の女の子になろうとするお話で、毎回予想がつかない展開が面白いです。阿武さんというキャラクターに惹かれたならおすすめですが、途中から彼女がダメな男と同棲する流れになるので、そこがイヤだなと思う方もいるかもしれないなって思いました。