華麗なる夜会の席上、公爵令嬢のレイチェルは許嫁であるエリオット王子から身に覚えのない罪を叫弾され、婚約を破棄されてしまう。それどころか罪を認めないレイチェルに怒った王子は彼女を地下牢に投獄してしまった。これは恋敵の陰謀か、はたまた政敵の策略か!?
だが渦中のレイチェルは思った…。
「今こそゴロゴロし放題のスローライフ&楽しい休暇の始まりだ!」と。
だらだら生活と王子への嫌がらせを心置きなく満喫する悪役令嬢の監獄スローライフが始まる!!??
本作は非常にテンポの良いコメディとなっています。控えめで自分を主張せず男を立てる模範的な令嬢そのものと周囲から評価されてきた公爵令嬢レイチェルはある日の夜会で許嫁であるエリオット王子に最愛のマーガレット嬢に危害を加えたとして謂れのない罪を着せられ捕らえられ、良心があるのなら謝罪をとつのる王子に対してレイチェルは至って冷静に罪を否定しました。反省をしないレイチェルに怒った王子は「人生は長いのだ。監獄暮らしをたっぷり楽しむがいい」と投獄命令を出しますが…。普通なら泣いて許しを乞うはずが、「ええ殿下、せっかくなのですからゆっくり楽しませていただきますわ」とにっこり笑ってみせるレイチェル。アレ?なんかおかしいぞ?
早速地下牢へと連行されまずが、牢番はなんだか戸惑っています。不思議に思った王子の側近であるサイクスが牢を覗くと牢の中にはびっしりと木箱が積んでありました。牢番の話によれば”不要物を一旦保管しておくため”に役人が昼間に運び込んだとのこと。仕方なしにサイクスがレイチェルをその牢に入れ退出しようとするとガラガラガシャンと聞きなれない音が響きます。振り返った先には牢の中から大きな南京錠をかけるレイチェルの姿が!訳もわからないままに急いで王子へ報告に向かい再び戻って来ると今度は本来は無いはずのソファーベッドに横たわりながら優雅に本を読み、ポットでお茶を淹れている…!?何処から持ち込んだ!?と問い詰める王子を無視してあたりを見回したレイチェルはおもむろに積んであった木箱を開けるとクッキーを取り出して満足げです。
そう、”不要物”として持ち込まれた木箱は全て、この展開を予測していたレイチェルのための籠城物資でした。
レイチェルが模範的な令嬢と評価されていたのは両親が貴族子弟として必要な倫理教育を施してひた隠しにしていた仮の姿。幼少期からやられたらやり返す、倍返しだ!な奇想天外奇天烈令嬢であり、公爵家では”鬼子”と恐れられていたのです。「あの中身が空っぽの見てくれ男が!よりによって鬼子を起こしやがった!」とレイチェルの両親は顔面蒼白。「これは…殿下詰んだな」と。しかも今回の断罪にはレイチェルの弟ジョージも糾弾側にいると聞き及び「ジョージ…死んだな」とお通夜モードです。
「あのバカとの婚約が向こうの責任で破談になったうえに、しばらく何もしないでバカンスできるのね?素敵じゃない!」とノリノリのレイチェルは、それだけに飽き足らず自分で秘密裏に組織していた裏部隊”闇余の黒猫”や自分の持つ人脈、物資、才能を駆使して冤罪を着せてきた王子達にあの手この手で嫌がらせを始めました。
模範的な令嬢の仮面を外したレイチェルの痛快な反撃、追い詰められていく王子達の悲劇に目が離せません!
1巻で完結なのでサクッと読みたい方にもおすすめの作品です。